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All About ALCOVE
坂の街尾道に佇む小さな古民家の物語
アルコーブの物語は、2018年、広島県の海沿いの街、尾道市の小さな路地にひっそりと立っていた空き家を購入したことから始まりました。
その昔父から聞いた「尾道」という言葉、母の出身地である広島での優しい思い出、そしてこの街を通して出会うことのできた人々との繋がりによって、引き寄せられるようにここにきた私たちでした。
尾道は、美しい伝統美と、新しいアートやデザインが絶妙なバランスで共存している街です。
ここを「第二の故郷」と呼ぶことができるのは本当に幸運なことです。
尾道は深い歴史の趣を残しつつ常に変化や進歩を受け入れてきた街です。
山手エリアの入り組んだ急な坂道たちは、旅をする人には楽しい特徴の一つですが、暮らす人、
特にお年寄りにとってはどんどん難しくなっていく住環境でもあります。
多くのお年寄りが山手のお家から引っ越して行かれる。
これがこの坂の街に古民家の空き家が数多く点在する理由の一つだと思います。
古い家にはそれぞれの長い歴史があります。
最近の資料調査によると、この小さな家の当初の建築は1892年だったそうです。
実は私たちは、ロンドンで小さなサーフェスデザインスタジオを運営しています。
壁紙や、ファブリック、生活雑貨などのデザインをしています。
イギリスでは各種リノベーションの経験もありますが、日本では初めてでした。
しかも、築100年以上の「木の家」です
いつも楽観的に仕事を始める私たち。
今回はこの家を私たちのデザインの「ケーススタディ」にしてみようと思いました。
新しいチャレンジの始まりでした。
家はリノベーションを心待ちにしていたような状態でした。
高架下を潜って階段を上がった細い路地の真ん中、という条件の古民家を引き受けてくれる大工さんはなかなか見つかりませんでした。
でも、尾道の友人のおかげで古民家の扱いに慣れた建築士さんが決まり、サイクリング繋がりの友人の紹介で大工さんと大工さんチームが決まりました
誰も手をつけたがらなかったこの古民家のしっかりした背骨を見つけてくれた人々の手によってこの家はどんどん息を吹き返していったのでした。
この難しい家のデザインを引き受けてくださったのは、
アトリエアーキツリーさんです。
瀬戸内エリアで、サステナブル、エコフレンドリー、そして目の前だけではなく、長いスパンで物事を企画するのが得意な素敵な建築士さんです。
コンストラクションは、釣りの得意な瀬戸内ベースの大工さんと、それぞれ我慢強くプロジェクトを引き受けてくださったチームが、路地という環境をしっかり考慮しながら進めていってくれました。
そしてここでちょっとしたサプライズがありました。
「床下に大きな穴があるよ」と連絡が入ったのでした。
50年以上この路地で暮らすご近所さんの話によると、大昔はここに共同の井戸があったはず。
でも井戸といっても水はどこにも見当たらない。
わー、まいったな、というのが私の本音でしたが、チームアルコーブは平気でした。
補強もきちんとされているようだし大丈夫!
それよりも、氏神様を探してお祓いをしてもらわねば!と、手配をしてくれたのは、サイクリングチームのキャプテンでした。
というわけで、アルコーブには、小さな神棚があります。
アルコーブの氏神様は艮神社さんということもわかり、宮司さんにきていただきました。
こんな風にきちんと設計をして、丁寧にリノベをしてもらい、的確にお祓いを受けて十分に守られた、小さな古民家アルコーブが出来上がりました。
できるだけローカルのもの、古材や丈夫な素材で作ってもらったスペースは潔いほどスッキリしています。
ナチュラルウッド、ステンレス、レンガという素材のバックグラウンドは、強いコントラストをつけたペンキの色にしました。
さてこのペンキですが、私たちがWALPAさんとのコラボで作らせていただいたダークグレーとダークブルーです。
白は、WALPAさんオリジナルの「白の中の白」を使わせていただくことができました。
こんなふうにして、男前な箱が出来上がったというわけです。
まるでタペストリーのようなこのブラインドは、瀬戸内デニムさんが確かな感性で作り上げたジャガードです。
ロンドンで集めたナンバーたちがベースの「セーフティインナンバーズ」というデザインとのコラボレーションです。
そしてとても丁寧に取り付けてくださったのでした。
少々無骨な一枚板のステンレスでできたワークトップを支えるのは、100年もの時間を経てアルコーブにやってきた古いレンガたちです。
このレンガは向島の紡績工場、そして戦時中は英国やアメリカの捕虜収容所だった建物が、近年崩された時に尾道の人々によって保護されたレンガです。
友人のおかげで私たちもその歴史のかけらを引き継ぐことができました。
白い壁、ナチュラルウッドの階段に、強いストライプのラインと、スチールが入ると雰囲気が変わります。
でも全て必要だからそこにあるものばかりです。
採光と余白をうまく取りいれてもらいました。
丁寧に作り上げてもらったこの空間をレスペクトしながら、
そこで使う物たちも用の美と、個性を大切に選んでいきたいと思います。
ソファベッドと、アイランドソファの間にあるコーヒーテーブルは時間をかけて見つけたものです。
某ブランドのニューヨークのお店をデザインした方によって作られたものとのことです。
何より、大きさが気に入っています。
ビンテージ家具の、傷やしみなどの経年変化に私たちはストーリーを感じてしまうんです。
ロンドンのスタジオや自宅でも、ビンテージショップや蚤の市で手に入れた家具を使うことが多いです。
これはリサイクルという意味も もちろんあるのですが、古いものは前に使っていた人の手によってどこか温かみや、丸味が加えられていて、なぜかしっくりいくような気がします。
古い家具や、大切に受け継いだ家具などにある癖(歪みや、傷、ステインなど)が苦手な方は、アルコーブ予約はお避け下さい。
すみません。
そして実はアルコーブは、ポップアップショップや、ワークショップの場としても利用していただいています。
ローカルの元気なお野菜を使った「美味しい盛り付けワークショップ」や、美しいテキスタイルのポップアップショップなど、たくさんの人にクリエイティブな時間を過ごしていただくことができました。
そして今日、アルコーブはいろんな人の手や温かい心によってゆっくりとHappy Homeに育ってきました。
これからもたくさんの人にアルコーブの歴史作りに参加してもらうこと、それぞれの思い出を作ってもらうこと、それが私たちの夢でもあります。